千住博は東京藝術大学で日本画を学んだ現代の作家です。日本画の存在やその技法を世界に認知させ、真の国際性をもった芸術領域にすべく、絵画制作にとどまらず、講演や著述など幅広い活動を行っています。
滔々と流れ落ちる滝。画面から伝わってくるのは、一瞬を切り取った静止した時間ではなく、流れ落ち続ける水の連続した動きそのもののように感じられます。
日本では古くから滝などの自然物をそのまま崇敬の対象とする文化がありましたが、ここに描かれているのは「水」と「重力」のみであり、その要素を極限まで切り詰めています。その結果、画面には生命にとって最も根源的な要素のみが残りました。
千住の作品が国境を越えて高い評価を得ているのは、そういった生命に対しての普遍的な畏敬の念を呼び起こされるからかもしれません。